土着文化とホラー表現のグローバル化について
先週の土曜日ひさしぶりにテレビで稲垣吾郎さんの「ほんとうにあった怖い話 夏の特別編2017」を観ました。
子供の頃にホラー、超常現象、都市伝説などのオカルト番組が大好きだった私としては最近はめっきりオカルト番組を放送しなくなったことは寂しいかぎりです。
写真、映像の編集技術の発展とインターネットの普及で、もう昔みたいに信じてもらえないから人気がなくなったんでしょうね。
怖い話のパターンもだいぶ前からネタ切れというかんじで新鮮さがないですよね。
今回の「ほん怖」もどこかで観たような話ばかりでした。
さて、今回は土着文化とホラー表現の関係性について考察していきたいと思います。
ジャパニーズホラーと水の関係性
ジャパニーズホラー映画には水が出てくることが多いことをご存知ですか?
「リング」の貞子は井戸に落とされて死んでいます。
「仄暗い水の底から」も水をテーマにしたJホラーとして有名です。
また、閉めたはずの蛇口から勝手に水が流れ出している描写や水に濡れた女の幽霊などはよく見るパターンかと思います。
これらの描写はJホラー特有であり、日本人は水と恐怖を結びつける特長があるんです。
それは日本が島国であり海に囲まれているということと、昔から水難事故が多かったためと言われています。
津波や洪水による被害、入水自殺など水と死が直結する環境であるがために、水から死を連想するようになったようです。
このように土着文化はその国に住む人間の恐怖心にも影響を与えるのです。
ゾンビと幽霊
古い海外ホラーのほとんどはゾンビが出てくるのに対して、日本のホラーはなぜ幽霊なのでしょうか?
これは宗教の違いです。
キリスト教は最後の審判で死体が蘇り、エルサレムを目指すと信じられているため、土葬が一般的です。
いざ蘇ったときに肉体がなければ、歩くこともできませんよね。
この最後の審判で死体が蘇るところからゾンビ(リビングデッド)のイメージが生まれました。
ちなみにキリスト教圏では死体が蘇ると信じられているため、死後解剖されるということは死よりも恐ろしいことだと考えられていました。
そのため、18世紀のイギリスでは死刑囚への処罰として、死刑執行後に外科医の解剖訓練用に死体を差し出すという法律があったそうです。
日本では昔から火葬が行われてきたため、肉体は残りません。
霊魂という発想はあってもゾンビという発想は生まれてこないわけです。
ホラーのグローバル化
2013年制作のインド・オブ・ザ・デッドはインドで初めて製作されたゾンビ映画です。
作中で土葬文化のないインドでゾンビが出る理由について、「グローバル化だ」と説明するなどネタ満載のホラー映画です。
日本をはじめとする土葬文化のない仏教国にゾンビ映画が輸入されてきたように、ジャパニーズホラーもまたキリスト教国に輸出されています。
ジャパニーズホラーはハリウッドで成功し、Jホラーというジャンルを確立しました。
土着文化からくる特有のホラー表現が海を越えた異文化の人間が観ても同じように恐怖を感じるということがわかったのです。
最近では日本でもゾンビが扱われたり、逆に海外で日本的な呪いや怨念がテーマとなることもあり、ホラー文化はグローバル化したと言えるでしょう。
ホラー表現はトレンドを追う
土着文化が恐怖表現に影響を与える理由は身近でイメージしやすいテーマのほうが追体験しやすいからです。
そのため、ホラー表現はトレンドを追う傾向にあります。
例えば、「リング」はビデオテープを媒体に貞子が現れますが、今の時代ならDVDとかインターネット回線を通ってやってくるのでしょう。
「着信アリ」では携帯電話の着信やメールを媒体に死の呪いをかけられるというものでした。
トレンドを追うことで、多くの視聴者が追体験しやすい作りになっているのです。