それでもかぶはぬけません

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大手電機メーカーSEが語るプロパー社員のスキルの空洞化という危機

今年の4月、私は会社の部署異動がありました。

入社から3年間インフラエンジニアとして、ひたすらサーバ室の中でサーバー、ネットワーク、データベースなどをいじってきた私はこれまであまりお客さんと直接関わることが少なかったので、今回の部署異動は大きな転機となるはずでした。

新しい部署でも職種は変わらずSEなんですが、システムの全体設計やプロジェクトマネジメントなどを行うフロントSEの仕事が任される予定でした。

今回は私がIT業界で体験した業界の闇について語っていきましょう。

 

 

結婚してすぐに大阪へ出向

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最初に私の経歴を紹介します。

学生時代は情報科学を専攻して、卒業後は当たり前のようにIT業界に入りました。

一応、有名といわれる大手電機メーカーに入社して、東京本社に配属後、3年目になるまでは順風満帆な生活を送っていました。

入社2年目の春に結婚すると、突然平和な生活は幕を閉じました。

上司から会議室に呼び出され、行ってみると事業部のお偉いさんがいる。

何事かと思ってあっけにとられているとお偉いさんが口火を切りました。

「来月から大阪に行ってもらうから」

はい、出た!マイホーム買った途端に地方に飛ばされる的なアレね。

テンプレ通り、2週間前に新しいマンションの賃貸契約したばっかりだよ!

当たり前だろ、結婚したばっかりなんだから!

心の中で怒りの炎が燃え盛る中、お偉いさんが追い打ちをかけてくる。

「でも良かったなぁ~、独身で!家族いたら大変だもんなあ!」

うん、そりゃ知らないよね。上司とかには言ってるけど、流石に事業部の幹部クラスには伝わってないから仕方ないよね。

 

・・・こうして、私は結婚後の同棲約1か月あまりで大阪に旅立つことになったのである。

 

大阪インフラエンジニア時代の決意

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大阪の最初の配属場所はインフラエンジニアの専門部隊だったので、東京本社でやっていたことと大きく変わるわけではありませんでした。

しかし、部署のチーム構成はがらっと変わり、グループメンバーの半分以上は派遣社員のSEでした。

私は新天地での仕事のほとんどを派遣社員の方に教えてもらいました。

というのも私の配属された部署で実働しているのはほとんどが派遣社員であり、豊富な知識と高いスキルを持ち、仕事を教えられるのが派遣社員しかいなかったからです。

残ったプロパー社員は化石のような知識で指揮をとる管理職と知識もスキルも乏しく、ただ上司に言われるがままに右往左往する若手社員だけだったのです。

このような環境で社会人3年目だった私は悩みました。

プロパー社員の存在価値はなんなのか?

給料の格差分だけプロパー社員が優れている点とはなんなのか?

派遣社員は面倒くさい社内業務や人付き合いがなく、気楽に働けるのがメリットとはよく言われるものの、結局明確な答えは出ないままでした。

答えは見つからなかったが、このとき専門領域一本で戦うのはやめようと思いました。

煩雑な社内業務やマネジメント業務に追われるプロパー社員はITの専門知識をひたすら極める派遣社員に使える時間という点でかなわない。

それならインフラの知識一本で戦おうとせず、開発職や営業職あるいは他業種の仕事などいろいろ経験して多角的にビジネスを考えられるようになれば、高い専門性を売りにする派遣社員とは差別化が図れるのではないかと考えました。

 

二度目の異動とできることの少なさへの失望

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そんな私に転機が訪れたのが今年の4月のことです。

会社も人材の固定化に危機感を覚え、人材流動を積極的に行うようになったのです。

私もその波に乗って、現在のフロントSEの仕事に就くことができました。

さて、4月に異動してから約5か月ほどが経ち、今現在の私は幸せになったのでしょうか?

答えは仕事の幅が広がっている気が全くしない。

蓋を開けてみれば、人材流動なんてみせかけだけのハリボテ施策でした。

異動先のベテラン社員は常に自分の仕事で手一杯なので、当然なにも知らない若手を教育している余裕なんてないのです。

そうなると自分のできる仕事を探すしかないので、おのずとこれまでやってきたインフラ業務をこなすしかなくなるのです。
 

教育するコストはないけど、スキルの幅は広げろ!

環境は変えてやったから、あとは自力で学べ!

できるようになるまでは仕事を任せられないから、自分のできる仕事を見つけろ!


…これじゃあ、既存の業務をやり続けて専門性を高めるくらいしかできることがないんですよ。

そんなこんなで今私は毎日どうするべきか?と悩んでいます。

残念ながら、答えは見つかっていません。

 

プロパー社員のスキルの空洞化

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結局、派遣社員を大量に雇って高いスキルが必要な作業をさせていたのも、単にプロパー社員の若手をしっかり育成する余力がなかったから、安い人件費で高いスキルを持つ派遣社員を発注するという楽を覚えてしまったのではないかと思います。

景気がいいうちはそれでも良かったのですが、今はどの業界もコストカットが進み、派遣社員の発注も内製化へと進みつつあります。

しかし、ここで大きな問題が発生します。

これまで若手の育成をおろそかにして派遣社員の発注で楽をしていたんですから、いきなり内製化と言われても、プロパー社員が対応できるわけがありませんよね。

まともなスキルの下地がないまま年齢だけを重ねると、現場の事情やノウハウに疎いまま、マネジメントの真似事を始めるプロパー社員が誕生するのです。

こういう人がプロジェクトの指揮をとると面倒くさくなって派遣社員に丸投げしたり、提言に耳を傾けることなく自分の古い経験則をごり押しして現場をかき乱す老害になるんです。